(新潮文庫、西川治 著)
写真家でエッセイストの西川治さんが書いた本「世界ぐるっと朝食紀行」をご紹介します。
この本は、僕の書斎の本棚に10年以上置いて愛用しているマイ・ロングセラー本の1冊です。
西川さんが旅した世界各国のバラエティ豊かな朝食が約40話も登場して、とにかくどの朝食も美味しそうです。
「この朝食を食べるために、あの国へ行ってみようかなー。」と思わせてくれる本です。
「海外旅行行きたいけど、どこの国にしようかな?」と迷ったとき、この本はかならず役に立ちます。
「世界ぐるっと朝食紀行」の魅力
この本の魅力をいくつか挙げます。
文章が無骨だがおもしろい
西川さんの文章は決して上手くはないんですが、簡潔で、気持ちがストレートに出ていて、読んでいて気持ちよいです。
おいしい料理を、こんなシチュエーションで、こんな感じでいただきました、ということを、とても分かりやすく読み手に伝えてくれます。
むずかしい言い回しを一切使わないので、スラスラ読めてしまうのも好印象です。
朝食の写真がとにかく美味しそう
写真家の西川治さんが自ら撮影した朝食の写真が、本当に美味しそうです。
カラー写真と白黒写真の割合は半々くらいですが、カラー写真はもちろん美味しそうですが、白黒写真の料理アップ写真まで美味しそうです。さすがプロの写真家だなと思います。
人物のスナップ写真もいいです。料理をつくる人、料理を食べる人がさりげなくフレームにおさめられていて、西川さんの文章と相性がよいです。
とにかくよく食べる
西川さんは、どこの国でもよく食べます。前の日に飲みすぎて二日酔いだろうが何だろうが、朝食を食べさせてくれる店やホテルでよく食べます。
食べっぷりの良い西川さんの文章を読んでいるだけで、なんだかお腹が空いてきます。
僕の気に入っている話
40話ほどある朝食話のなかで、僕が気に入っている話を挙げます。
【トルコ】バザール(1991年)「どこへ行ったら朝食が食べられるだろう」
トルコのグランド・バザールにあるチャイハネ(喫茶店)でチャイを飲んだあと、朝食を食べられるお店をさがします。
あるお店では、マトンを焼いてトマトとパンと一緒に食べる一皿が出てきます。
屋台料理では、ムール貝の殻の中にムール貝の刻んだ身と玉ねぎが入ったリゾット風の料理に挑戦します。
どれもたまらなく美味そうです。
【トルコ】トラブソンの街(1991年)「骨と肉のエキスのスープ」
続いては2話目のトルコ、トラブソン。
食堂で出された「肉だんごのスープ」(Kofde:カフテ)は8000トルコリラで80円くらい。トルコ料理って、レモンを絞って食べる料理が多いんですね。ほんとウマそう。トルコに行ってみたくなります。
写真に添えられた文章にも食欲をそそります。次の文章です。
「スープとパン。清貧の幸福を感じる。この店にいる人々は食卓の幸を感じさせた。ここのスープとパンはうまかった。」
「羊の肉とジャガイモのチョルバス・・・スープ。安い食材だ。いらぬものは入っていない。わずかな香辛料とさわやかなジャガイモと羊の匂いだけだ。」
【オーストラリア】(1967年)ボタニー・ベイ「ユダヤ人の経営するホテルで毎日作った朝食」
西川さんが若いころ、台所のある安いホテルに泊まり、安い肉を買って、パンを買って、安いワインを買ってきて自炊する話です。
台所で肉を厚めに切り、ステーキを焼いて食べる。パンをちぎって食べ、安いワインを飲む・・・。
とにかく毎朝ステーキという豪快さがすごい。
【オーストラリア】(1982年)エアーズロック「エアーズロックの朝食は、すがすがしい」
早朝の冷え冷えした空気のなか、周囲9Kmのエアーズロックの回りを完走します。
「その日の朝食はぼくが食べた朝食でもっともうまいものだった。」
という朝食は、
- コップになみなみと注いだオレンジジュース
- ベーコン・アンド・エッグ
- カリカリに焼いたトースト
- コーヒー
絶景の景色とともに味わう最高の朝食!
想像しただけでオーストラリアに行きたくなります。
姉妹本のご紹介
「世界ぐるっと朝食紀行」と同じシリーズもので、「世界ぐるっとほろ酔い紀行」「世界ぐるっと肉食紀行」があります。
僕は3冊とも持っていますが、面白さはダントツで「朝食紀行」です。