ひさしぶりにANA(全日空)の飛行機に乗ったとき、機内誌「翼の王国」(2018年6月号)を読んでいたら、面白いエッセイがあったので、ご紹介します。
作家である伊集院静さんの「旅行鞄のガラクタ」(第13回)というエッセイです。
いつの間にか連載13回なんですね。
本業サラリーマンの出張のとき、よく楽天トラベルパックを利用するのですが、最近はずっと「航空券+宿泊」のパック料金は、JALのほうがチョットだけ安かったので、ずっとJALに乗っていたのです。
でも最近はANAのほうが安くなることもあり、ひさしぶりに乗って、はじめてこのエッセイに気づきました。
この「旅行鞄のガラクタ」というエッセイは、旅で手に入れた雑貨にまつわるエピソードを紹介するエッセイのようです。
↓ こんなページです。きれいなレイアウトですね。
↓出だしの文章が軽快で、つい先を読み進めてしまいます。
↓ 出だしの文章です。
旅行鞄のガラクタ 第十三回
文-伊集院 静
写真-宮澤正明
今月はまず下のガラクタの写真を見てもらいたい。
どこか愛嬌のある面(つら)をした小動物? いや動物というより、外見は両生類のカエルである。外見はそうだが、中国では妖怪の類いに入るらしい。妖怪と聞くと中年以上の人たちは何か悪戯をしたり、怖い目に遭うイメージがあるが、今の若者、子供は妖怪に親近感を抱くようだ。外見がカエルと書いたが、正確には蝦蟇(ガマ)ガエルである。てのひらにのる大きさで、おむすびの半分のサイズだ。2本の前足で白砂のようなものを踏んでいる。後ろ足がわずかに見える。この後ろ足、実は1本しかない。で”三足蝦蟇”と呼ばれる。何か丸いものをくわえている。中央に穴がある。中国の古銭である。
なぜ銭をカエルがくわえているか? そこに私が長く、仕事場のガラクタ置き場から放り出さない理由がある。
どうです、続きの文章を読みたくなったでしょ?
僕は伊集院静さんのお名前だけは知っていたのですが、ちゃんと読み物としての文章を読んだことがありませんでした。
でもこのエッセイを読んでみて、もっと長編の読み物を読んでみたくなりました。飾り気がなくて、小気味よい語り口の文章だと思いました。
文章の中で妖怪について触れていますが、ご存知のとおり、中年以上のイメージする妖怪は「ゲゲゲの鬼太郎」や「日本昔ばなし」、若者のイメージする妖怪は「妖怪ウォッチ」のことを指しています。若い子も年配の人もグッと惹きつける話の持っていきかた、スゴイなあ。
冒頭以降の話のあらすじです。
このガマの置物は、中国の70歳すぎの現地のコーディネーターからもらったもので、伊集院さんはこの老人と仕事をするのが好きだったそうです。
『仕事で大切なのは相性であり、さらに言えば”運”が大切だと私は考えている』
と続きます。
「仕事で大切なのは相性」・・・サラリーマンの心をくすぐるフレーズ、さすがですね。
たしかにサラリーマン稼業でいちばん骨が折れるのは、職場で一緒に働く人との人間関係です。「人間関係さえクリアできたら、仕事の8割はすでに終わったようなものだよ。」と僕のかつての上司は言っていました。
仕事で出会う人との相性は、まさに運まかせのようなところがあります。
できるなら、相性のよい仕事と、相性のよい仕事仲間に出会えますように!
このあとの展開としては、気のきいたジョークが2、3回続いたあとで、爽やかに終わりを迎えます。
さすがプロフェッショナルの作家さんはスゴイと思いました。