「エンゲル係数 急伸」の記事内容
2017年3月30日の朝日新聞で、経済面の記事が気になりました。
「エンゲル係数 急伸」 29年ぶり水準、介護・共働き 惣菜購入増
消費支出のうち食費が占める割合を示す「エンゲル係数」が急伸している。総務省の家計調査によると、2016年(2人以上世帯)は25.8%と前年から0.8%上昇し、29年ぶりの高水準になった。かつて学校で、低下することが「豊かさを測る尺度の一つ」と教わった係数がなぜ今、上昇しているのか。
(以下、インタビュー記事から抜粋)
- (74歳女性)「夫の介護で疲れているときはお惣菜にしています。手作りするのと半々ぐらい」「食費はかかるけど、そうも言っていられない」
- (44歳会社員女性)「時間がなくて、ついついお世話になっています」「割高だけど、時間を買うと思って週に3回ぐらいは買っています」
経済成長とともに下降の一途をたどってきたエンゲル係数は、05年を境に上昇傾向に転換した。
総務省によると、エンゲル係数が上昇した背景には
- 食品価格の上昇(0.9ポイント)
- 支出の減少(0.7ポイント)
- 調理食品や外食などの増加(0.2ポイント)
があるということです。記事は次のように続いています。
「生活にゆとりのない場合、他の生活費は減らせても、食料費だけは減らすことが難しいので、一般的には、エンゲル係数が大きくなる」
30年前の中学「公民」の教科書でこう説明されていたエンゲル係数だが、最近の上昇は貧困の予兆なのか。
岐阜大の大藪千穂教授は「かつてと違い、高齢化や為替変動、食文化の変化など様々な要因が全部混ざってエンゲル係数が上がっており、『上昇したから貧困』と直結はできなくなっている」と指摘。一方で、「特に低所得者層にとっては今でも生活の大変さを表す指標の一つとして重要な意味を持ち、中身を分析して影響を考えていく必要がある」と話す。
エンゲル係数上昇、4つのケース
日本が貧困化していないとしたら、2005年を境にエンゲル係数が上昇に転じた原因は、いったい何なのか?
気になったので、係数が上がる要因を整理してみました。
エンゲル係数は「消費支出のうち食費が占める割合」なので、次の4つのケースが考えられます。
ケース①
「消費支出が減ったのでエンゲル係数が上がった」
(例)
収入20万円、消費支出10万円、食費5万円 :エンゲル係数50%
↓
収入20万円、消費支出7万円、食費5万円 :エンゲル係数71%
ケース②
「食費が上がったのでエンゲル係数が上がった」
(例)
収入20万円、消費支出10万円、食費5万円 :エンゲル係数50%
↓
収入20万円、消費支出10万円、食費7万円 :エンゲル係数70%
ケース③
「収入が上がって、消費支出も食費も上がったが、食費のほうがより増えたためエンゲル係数が上がった」
(例)
収入20万円、消費支出10万円、食費5万円 :エンゲル係数50%
↓
収入40万円、消費支出15万円、食費10万円 :エンゲル係数66%
ケース④
「収入が下がって、消費支出も食費も下がったが、消費支出のほうがより減ったためエンゲル係数が上がった」
(例)
収入20万円、消費支出10万円、食費5万円 :エンゲル係数50%
↓
収入15万円、消費支出7万円、食費4万円 :エンゲル係数57%
エンゲル係数上昇の原因を考えた
エンゲル係数上昇の4つのケースを見比べてみると、実感があるのはケース①とケース④です。
ケース①「消費支出が減ったのでエンゲル係数が上がった」
ケース④「収入が下がって、消費支出も食費も下がったが、消費支出のほうがより減ったためエンゲル係数が上がった」
つまり2005年を境に消費支出が徐々に減っていったというのが、いちばん納得できる要因です。
新聞に載っているエンゲル係数の推移グラフを見ると、2010年頃から急激にエンゲル係数が上がっています。
推測ですが、2010年頃から流行り出したものが2つあり、それが消費支出の減少につながっているんじゃないかと考えます。
「断捨離」と「シェア」です。
断捨離は、物への執着を捨てる、物を増やさない考え方です。
シェアとは、物を購入せず、互いに貸し借りして共有する考え方です。
エンゲル係数が上がった要因は、貧困化して食うものに困る人が増えたわけでなく、物を極力買わない生活スタイルの人が増えたからではないでしょうか。
それって良いことだと思います。